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COLLABORATION

Collaboration

磨き抜かれた匠の美意識が、
空間に幽玄なる美を纏わせる。

エントランスホール石庭竣工写真(2025年11月撮影)

風景や暮らしの境界をつなぐ自然の庭づくりを目指す、
荻野景観設計。
京都室町通で創業した絹の老舗白生地メーカー、伊と幸。
2つの匠の美意識が、ここでしか味わえない美しい時へと誘う。

COLLABORATION

石庭が刻む、静やかな時が、大人の審美眼を問う。

実際にエントランスの石庭に使われる生野丹波石

荻野 彰大 氏

荻野 彰大 氏

荻野景観設計株式会社
専務取締役 設計部部長

1987年大阪府生まれ。2012年早稲田大学大学院建築学科修士課程修了、同年荻野建材株式会社に入社。2017年より現職。2022年「富田林の家」が第11回みどりのまちづくり賞受賞。2025年「福武トレス」が日本造園学会賞(設計作為品部門)受賞。建築・都市の文脈を受け継ぎ、風景や暮らしの境界をつなぐ「自然の庭づくり」を目指す。

エントランスホールに幽玄な光景を届ける「石庭」。この庭づくりを手掛けた荻野景観設計の荻野彰大氏は、作品に込めた想いについて次のように語る。
「私たちが目指しているのは、イングリッシュガーデンや禅の庭のように『つくり込んだオブジェのような庭』ではなく、人がそこにいて感性が高められる『自然の庭』をつくること。本作品においてもこの想いのもと、豊かなやすらぎを感じられる庭づくりを追求しました。また、本計画地は高層ビルが建ち並ぶ京都の都心部に位置していながら、大通りから一歩奥まっており、落ち着いたヒューマンスケールな風景が広がるアドレスです。こうした立地の特徴を踏まえ、奇をてらって刺激を与えるのではなく、眺める方々の心を穏やかに澄ませられる庭となることを目指しました。庭づくりでもっとも心掛けたのは、いかに作為をそぎ落とし、自然を感じられるようにしているか。たとえば、石の角、地面と岩盤のつながり、苔の稜線など、細部に至るまで自然そのものの味わいを活かしています。この庭を眺めることにより、元来人工的なものである建物内において『自然ならではの熟成感』を感じていただければ幸いです」。
世界にふたつとない表情と風合いをもつ石。それは静物でありながら、角度や光により眺めるたびに異なる趣を醸し出す。その美しさを愉しみながら寛ぐ時間は、ここに住まう方々だけが愉しむことのできる特別なものとなる。

Achievements

福武トレス

2024年度日本造園学会賞 設計部門にて受賞。

三井ガーデンホテル京都新町別邸

自然と繋がり、感性が澄みわたる時へ。

元々そこにあったかのように、
暮らしに優しく寄り添う風景を。

エントランスホールの開口部をフレームとして、その先に絵画のように広がる「石庭」の風景。そこには、一朝一夕では築くことのできない深みがあり、眺めているといつしか時間を忘れ、ゆったりとした寛ぎの空気の中へと入り込んでいく。荻野氏は、それこそが石庭の魅力だと言う。
「たとえば、アートやオブジェのような人工的なものを置くと、必然的にそこに目が行ってしまう。私たちが目指しているのはそのようなものではなく、元々そこにあったかのように暮らしにそっと寄り添い、優しく包み込んでくれる自然の風景をつくること。石をはじめとする自然物には、そんな不思議な力が秘められていると思います。日本は国土の7割が山でできており、人々は古来より美しい自然に囲まれて生活文化を育んできました。そのようにごく日常的に自然を感じ、私たちは暖かみや涼しさのような人間的な安心感をどこか無意識に覚えているのでしょう。住まわれる方々には、そのような自然との繋がりを感じていただきたいと思います」。
人間が文明を持つ前から存在する、石をはじめとした自然物。それらとの繋がりをいつも感じながら暮らすということ。それは、暮らしの本質的な豊かさを追求することと言えるだろう。

生野丹波石

吟味を重ねた素材一つひとつが、
新たな原風景を織りなしていく。

石庭を構成するのは、荻野氏の確かな審美眼で選び抜かれた石たち。その一つひとつに揺るぎなきこだわりが込められている。
「田の字地区の中枢に位置する本計画地は、送り火で知られる『五山』の中心地ともいえる場所です。すなわち、1200年以上もの長い歴史をもつ京都の自然、その文脈を引き継ぐ場所でもあるということ。このことを意識し、五山を構成する山々のなだらかな稜線をモチーフとし、柔らかな曲線で庭を構成しました。また、石を中心に比重を低く設定することで落ち着きある空間に仕上げているところも特徴です。使用している石は、マグマが固まってできた安山岩の『生野丹波石』。『層』がしっかりと出る石ですので、時間の積層、大地の歴史を感じていただけると思います。また、砂利には、古くから日本の庭づくりで使用されてきた伝統ある『伊勢砂利』を用いました。落ち着いた色味が特徴で、単一ながら若干ムラもあり、そこが深い味わいを醸成する素材です。いずれも決して華美なものではありませんが、豊かな風合いがあり、深みのある美しさを織りなします。これらの自然物とともに歳月を重ねていくことで、この場所の新たな原風景として記憶に継承されていってほしいという想いを込めています」。

伊勢砂利

スナゴケ

COLLABORATION

気高き粋人だけに贈りたい、匠の技がある。

エレベーターホール竣工写真(2025年11月撮影)

清水 美里 氏

清水 美里 氏京手描友禅職人

株式会社 伊と幸
絹ガラス事業部

早稲田大学教育学部英語英文学科卒。京都伝統工芸大学校京手描友禅専攻で下絵、糊置、挿友禅、金彩の各工程を学ぶ。2023年株式会社伊と幸に入社。第27回京都伝統工芸大学校卒業修了制作展 京都商工会議所会頭賞 受賞。ヴァン クリーフ アンド アーペル デザイン スカラーシップ2022受賞。

エントランスや各階エレベーターホールには、絹の白生地メーカー・伊と幸による「絹ガラス」を設えている。「絹ガラス」とは、絹の白生地をガラスで封入した職人技が光る装飾合わせガラス。同社に所属する京手描友禅職人の清水美里氏に、同作品に込めた想いを尋ねた。
「私ども伊と幸は、1931年に京都室町の地で創業した和装用白生地のシルクメーカーです。京都の伝統文化の担い手として次世代にその粋を継承し続けていくべく日々研鑽を重ねております。『絹ガラス』は2012年からはインテリアとして制作しているもので、絹織物の精巧な美しさとガラスの透明感を兼ね備え、どれだけ歳月を重ねても変わらずに美しく在り続けられるところが特徴です。今回の作品で目指したのは、室町通の名前の由来である『花の御所』の優雅な歴史と文化、気高い品格を表現すること。私どもが創業以来、本社を置き続けている室町通のレジデンスということもあり、格別な思い入れをもって作品づくりに努めました。手作業により伝統的な技術を駆使したアートの美しさを、住まわれる方々に日常の中で味わっていただきたいと思っております」。
京都らしい繊細な美しさを讃えた「絹ガラス」は、光の角度によりさまざまな表情を浮かべる。なにげない日常のなかで、その美しさを感じられることの歓びをぜひ感じてほしい。

エレベーターホール(絹ガラス)竣工写真(2025年11月撮影)

気高く、たおやかに、匠の技がきらめく。

京友禅職人の手しごとによる、
世界にひとつの作品が空間を装う。

建物内の随所に設えた「絹ガラス」の各特徴について、清水氏は次のように語る。
「1階のエントランスには、『麻の葉紋様』のワイドな作品を設置します。古くから麻の葉は成長やお守りといった意味合いがある縁起物であり、安心してお出かけ・ご帰宅できるようにという想いを込めたものです。また、1~5階エレベーターホールには、それぞれに趣きの異なる『立涌紋様』の作品を。2~4階に設置した作品には『暈し染め(ぼかしぞめ)』という技法で日本の伝統色を、1階と5階に設置した作品には『金彩』という技法であざやかな彩りを浮かび上がらせています」。
これらの技法はすべて職人の手技によるもので、工業製品では決して味わうことのできない有機的な美しさがある。清水氏は「それこそが、京友禅職人の手しごとでの醍醐味です」と語る。「時間をかけるからこそ現れる美しさを堪能していただければ幸いです」。
確かな技術と長い時間をかけてつくり上げた絹の白生地をガラスと融合させ、白生地そのものよりも透明感のあるものに仕上げ、さらに半永久的に美しさが続いていくようにした『絹ガラス』。見るたびに心を魅了する彩りが、そこにある。

「絹ガラス」

絹の白生地をガラスで封入した、職人技が光る装飾合わせガラス。その素材となる薄絹は加工が難しく、とても繊細な技術が必要となる。その工程は幾重にも及び、絹の白生地に「引き染め」(手作業によりハケで塗り描く染め技法)や「金彩」を施したのち、ガラスで挟み込んで窯に入れて焼き上げて融合させていく。

「暈し染め」

「暈し染め(ぼかしぞめ)」とは、色の一部をぼかして染める京友禅の染色技法のひとつ。2~4階にはこの技法を用い、日本の伝統色をあざやかに浮かび上がらせた。職人の手しごとで微妙に色味を調整することにより、世界にひとつだけの色合いと、手作業ならではの妙味を堪能できる。

「金彩」

金・銀などの箔や金粉を接着加工し、華やかな輝きと高級感を加える装飾技法。1階の作品には「けぶり立涌」という柄を織出した透け感のある生地「紋紗」に、押し箔で流れるような「曲線」を。5階の作品には3色(金・中色・銀)の箔を使用し、繊細な色味のグラデーションを表現した。

1階
花風(はなかぜ)

マテリアル写真

1F絹ガラス竣工写真(2025年11月撮影)

2階
曙色(あけぼのいろ)

マテリアル写真

2F絹ガラス竣工写真(2025年11月撮影)

3階
黄昏色(たそがれいろ)

マテリアル写真

3F絹ガラス竣工写真(2025年11月撮影)

4階
宵色(よいいろ)

マテリアル写真

4F絹ガラス竣工写真(2025年11月撮影)

5階
彩雲(さいうん)

マテリアル写真

5F絹ガラス竣工写真(2025年11月撮影)

※掲載のマテリアル写真の色合い等は、印刷物のため実際とは異なります。採用素材は施工上の都合により変更になる場合がございます。

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